epilogue
君と離れてから、僕はまた泣き虫に戻っちゃったみたい。
さっきもね、君のことを思い出して泣いてたんだ。
今の僕を見たら、ロザリアはがっかりするんだろうね。
ある程度大人になったつもりでいたけど、それは君がいたからだったのかな。
君の影響を受けていることは自覚してたけど、君がいなくなったら元通りで何も成長していなかったなんて、さすがに思いたくないよ。
遠い聖地で、今君は何をしているんだろう。
やっぱり忙しく働いているのかな?
夕食を食べているかもしれない。
寝てるのかもね。
僕にはそれを知る術はもうないけど、それでも君のことばかりを考えてるよ。
最後の日、みんなが僕にお別れの言葉をくれた。
ロザリアが口にしたのは、お疲れ様でした、の一言だけだった。
僕は、黙って頭を下げた。
『おめーなら、もっと大事にしてくれる奴が絶対いるからよ。無神経な言い方かもしんねーけど、いい機会だ』
一分の隙もなく、女王補佐官として振舞っているロザリアが気に入らなかったみたいで、よくわからない慰めの言葉をかけてくれたゼフェルの顔は怒ってた。
あの時は、いろんなことで頭がいっぱいだったから何も言えなかったけど、違うんだよゼフェル。
ロザリアは、僕のこと本当に大切に思ってくれてたんだから。
それにしても、あの調子じゃロザリアに文句の一つや二つは言ってるかも知れないな。
そんなこと考えてると、ロザリアにすごい形相で食ってかかるゼフェルと、それを冷たくあしらうロザリアの様子が頭に浮かんだから、少し笑った。
笑ってると、また涙が出てきた。
本当に泣いてばっかりだ。
もう二度と会えないなんて、今でも信じられないよ。
寂しいよ。
…すごく悔しいよ。
僕は今、僕のことが嫌いになりそうなんだ。
好きな人に置いて行かれる辛さをわかってたはずなのに。
僕が置いていかれた時は、あんなにも彼女を憎んだのに。
それなのに、僕は君を置いてきぼりにしてしまった。
あの時の彼女みたいに恋人を残して、一人で下界に降りてしまった。
望んでそうしたわけじゃないけど、それでも同じだって思うんだ。
こんなことを考えてるって知ったら、多分君は違うって言ってくれるだろうけど、でもダメなんだ。
自分を許せそうにないよ。
君がいない世界は、まるで僕を拒んでるように思える。
そして、僕もこの世界を拒んでいる。
でも、僕はいつか受け入れるかもしれない。
そんな日が来るなんて信じられないけど、僕は一度、好きな人がいない世界を受け入れたことがあるから。
ロザリアの力を借りて、だったけど。
君はどうなんだろう。
僕も立ち直れたんだから、君だって大丈夫だって思ったこともあったけど、それは僕の甘えから出た都合のいい考え方だって気づいた。
僕と君は同じ人間じゃないから、君のことはわからない。
だから、とても心配なんだ。
どうか、心を閉ざさないでほしい。
僕に君が現れたように、君にも誰かが現れてほしい。
そして、幸せになってよ。
忘れられてしまうのはとても悲しいけど、それでも君が幸せになれるのなら忘れて。
だからお願いだよ、幸せになって。
end
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